これまでにない技術で、
これまでにない医薬品を
創り出す
研究本部長
井川 智之 Igawa-Tomoyuki
研究本部は、どのような疾患に対して、何を標的(タンパク質など)として、どのようなモノ(低分子、中分子、抗体など)で医薬品を創製するのかを決定し、実現する組織です。ヒトの体内で起こっていること、あるいは病気の原因や進展について、最新科学は様々な答えを導いています。一方で、未だに理解できていないことの方が多いのが実状です。我々は、これらの“理解できていないこと”に対して、1つ1つ仮説や実験事実を積み重ねて、“理解できること”に変化させてゆきます。結果として、これまでとは異なるアプローチによる、これまでより効果の高い医薬品を生み出すことを目指しています。
中外製薬は長い間、バイオの中外として認知されてきました。これまでにはできないことを実現してきた実績があります。まず、モダリティとして価値の定まっていなかった抗体技術に先駆的に取り組み、日本で初めての抗体医薬であるアクテムラを開発しました。続いて、抗体の2つの腕が別々の標的タンパク質に結合するバイスペシフィック抗体の技術を適用したヘムライブラを開発しました。2020年には、1つの抗体を触媒的に機能させるリサイクリング抗体技術を適用したエンスプリングを上市しました。今後も、“創造で、想像を超える”モノづくりのプラットフォーム創りを競争優位性の基盤にしてゆきます。
一方で、化学創薬にも力を入れています。世の中には“化学を基盤とした創薬は限界に近づいた”という意見もありますが、我々はそうは考えていません。例えば10年以上研究を重ねて、2021年初めて臨床試験入りした中分子は、抗体でも低分子でも困難であった細胞内のタフターゲットに対して創薬できる技術として期待できます。中分子は、化学だけでもバイオだけでも達成することができず、バイオと化学の両方を強みとして持つ中外ならではの新領域となると期待しています。
われわれは、競争優位性の領域を広げてゆきたいと考えています。ユニークなモノづくり技術(低分子・中分子・抗体)を持つが故に、中外では新たなバイオロジーを見出す機会が増えると期待されます。アカデミアなどの外部のネットワークを通じて常に最先端の科学に接しながら、新たな薬剤の種を創薬研究に取り込む工夫もしています。このような研究を通じて、評価系の研究(薬理研究・ADME研究・安全性研究)や製剤技術などの競争優位性を獲得・増強してゆきたいと思っています。これらの拡大領域には、デジタル・ロボット技術などのIT関連技術も含まれます。デジタルは今後、我々の生産性に大きくポジティブな影響を与えてくれると期待しています。
中外製薬が、革新的な取り組みに集中できるのは、ロシュ・グループの一員だからです。ロシュ社からの導入品を効率的に国内で開発し安定的な収益基盤にできることに加え、大きな経営資源の投入が必要な自社創製品のグローバル開発をロシュ社と共同で行えるためです。ロシュ・グループの持つ大規模・高品質な化合物ライブラリーをはじめとする研究資源や情報やIT環境などのインフラストラクチャーを共有していることもメリットをもたらしています。
これまでにない技術で、これまでにない医薬品を創り出すのが、中外製薬の研究本部のミッションです。デジタルを含むあらゆる領域でこのような研究を行う意欲のある研究者をお待ちしています。
(作成日:2021年2月)