バックグラウンドの異なる研究員が
活発に議論しプロジェクトを進める風土
廣庭 奈緒香 Hironiwa-Naoka
理工学研究科 基礎理工学専攻 修了/2007年入社
CPRのメンバーとジョギングに行ったときの一枚(本人左端)
シンガポール発の新規抗体技術の開発をリード
CPRは中外製薬発の抗体技術を適応した創薬プロジェクトを研究する会社として立ち上がり、現在では抗体技術以外にも環状ペプチドの技術に基づいた創薬も行っています。また、シンガポールではアカデミアとの距離が近いため、サイエンスエコシステムと呼ばれる協同が進んでいます。
私は抗体エンジニアリングによるリード抗体の最終化に従事するとともに、世界で未解決の問題に対応すべく、日本の研究所と共同でシンガポール発の新規抗体技術の開発をリードしています。複数のプロジェクトがシンガポールと日本で誕生し、現在評価が進められています。
CPRには当地で採用された研究員も多く所属しており、バックグラウンドの違う研究員が議論しながら一緒になって問題解決し、プロジェクトを進めています。創薬機能に関わる多くのユニットが同じフロアのオフィスにいるため、プロジェクトの方針などの戦略だけでなく、困ったときやデータが気になるときに、機能を超えてプロジェクトメンバーやメンバー以外と議論して解決策を見出します。また、バックグラウンドが異なる人が集まっていることもあり、新しいアイデアが生まれるとすぐに試してみようという風土があります。
実際に、手持ちの方法論ではどうにも突破できなかった問題があったとき、専門の異なるメンバーからの提案を試してみたことで目標達成につながった事例もありました。チームワークと、その中で個々人が高い専門性を有しながらも互いに議論し、意見を取り入れることの重要性を感じた出来事です。
コミュニケーション力を活かしチームで新薬を
海外勤務を経験して一番よかった点は、コミュニケーション能力が向上したことです。苦手な英語で意思疎通を行い、バックグラウンドが全く違う研究員と話すときには、目標や意思を明確に示さなければなりませんでした。また、私が聞く側になった際には、理解が曖昧な点をそのままにしないことも重要です。
日本にいるときは、自分の考えを明確に示さなくても周囲が理解してくれているように感じていました。しかし、それは錯覚であり、研究者の態度としてもよくないものと理解しました。現在では、伝えたいことと、伝えてくれたことを明確化できるようになり、英語がある程度話せるようになったことと合わせ、円滑に業務を遂行する助けとなっています。
抗体エンジニアリングは世界を変える新しい技術であり、世界のどこにいても今後も開発をリードし続けていくのが私の目標です。新しい薬を待つ世界中の患者さんのために薬を届ける、という使命は今後も変わりません。海外赴任中の経験から得たコミュニケーション能力を活かし、専門性もバックグラウンドも異なる研究員と、チームで新しい薬を創出するプロジェクトをリードしていきたいと考えています。
休日の過ごし方
シンガポールでは皆が健康に気を遣う習慣があるため、平日休日問わずジムで筋力トレーニングを行い、休日は友人とともにジョギングやサイクリングに出かけています。そして、出かけた先のホーカーセンターと呼ばれる屋台街で、シンガポールの料理や各国の料理を楽しみます。マーライオンまでジョギングした後に、近くのローカルブリューワリーで休憩することもしばしばです。島内は自然が多く珍しい種類の鳥がいることから、バードウォッチングに出かけることもあります。
研究職を志す皆様へ
研究はいつもサイエンスがすべてに優先されるので、成果が出ないときも多く、地道な努力を積み重ねます。それでもまだ科学・研究の楽しさと辛さは変わりません。それどころか、研究者としてのキャリアを重ねるほど新しい人や環境に出会い、世界が広がっていきます。そして、新薬を創出する機会を通じて社会に貢献できることは大きな喜びです。創薬の楽しさと辛さを一緒に味わいながら、自分たちの手から作り出された薬を世界の患者さんに届けたいと思われたら、ぜひわたしたちと一緒に研究しましょう!
- 所属部署等は取材時のものです。