中外製薬

2 製薬技術本部

バイオプロセス研究
Bioprocess Research

抗体医薬品開発のための次世代製造技術に挑み続け、
「バイオNo.1の中外」を実現する

創薬研究で見つけた可能性を「薬」として実現する製薬研究、その中のバイオプロセス研究では、世界トップレベルの物質生産技術を開発し、中外製薬の革新的バイオ医薬品を世界中の患者さんに届けるために必要となる製造プロセスを実現します。​

バイオ医薬品とは、バイオテクノロジーを活用して生産される医薬品のことで、当社では主に組換えタンパク質の1つである抗体医薬品を開発しています。

医薬品として十分な品質・量の目的抗体を安定的に製造できるプロセス(産生細胞の樹立、培養法、精製法)を迅速に確立する必要がありますが、当社の革新的な抗体エンジニアリング技術による創薬によって、従来の製造技術では製造することが難しい分子が増えています。そのような分子でも「薬」として患者さんに届けられるように、現在の技術限界を超える次世代製造技術の開発に向けて、私たちは日々挑戦しています。

分子ごとに直面するさまざまな課題を乗り越えていくためには、実際に起きている現象の理解を深めることが重要です。細胞の遺伝子発現や代謝物、精製工程における種々の不純物などの膨大なデータを解析することで得たインサイトを活用して、高度なプロセスを確立する研究を推進しています。

仕事を進める上では、自らの研究領域の専門性を深めるとともに、さまざまな課題を総合的に判断できる広い視野が必要となります。また、これら一連の仕事は、異なる専門性を持った研究員(例:創薬研究、分析・物性研究など)との協働によって成し遂げられるものです。そのため、研究員同士が自由にディスカッションできる環境があり、ロシュ社やジェネンテック社、その他世界中のパートナーとの協働など、グローバルに連携する機会も数多くあります。

抗体原薬の製造フロー

Researcher's Voice

大石 結香Ohishi-Yuka

薬学研究科 創薬生命科学専攻 修了
2020年入社

遺伝子改変の技術開発で、高品質かつ低コストな薬を。
目標は世界中の患者さんが笑顔で暮らせること

現在の仕事・自身の役割は?

目的タンパク質を発現する細胞株の構築、培養プロセス開発に携わっており、初期開発プロジェクトでの株構築・培養プロセス開発の機能リーダーを務めています。また、細胞株の遺伝子改変による生産性や品質向上を目的とした技術開発プロジェクトのリーダーも務めています。

具体的にどのような研究を?

初期開発プロジェクトでは、株構築と培養プロセスの決定を行っています。研究本部で決定されたタンパク質の配列に基づいて配列を設計し、細胞に遺伝子導入をして細胞株を樹立します。その後、樹立した細胞株の培養条件を決定して製造への技術移管を行います。技術開発プロジェクトでは、将来のプロジェクト適用を目指し、目的タンパク質の産生細胞のオミクス解析や遺伝子スクリーニングを行い、生産性や品質の向上につながる遺伝子を探索しています。

やりがいやおもしろさは?

初期開発プロジェクト、技術開発プロジェクトの両方で多くの課題が生じます。一人では解決できないことも多く、さまざまな部署の方と、多面的に協力して最適な解決策を模索していきます。株構築・培養機能として適切な意見を出すことができ、最終的に課題をクリアできたときの喜びは何物にも代えがたいものがあります。苦労して決定したプロセスが工場でもうまくいき、製造された治験薬で臨床試験が始まった時にはとても感慨深く感じます。

職場環境の特徴や魅力は?

若手のうちから主体となって仕事を進めることができる点が特徴です。年次にかかわらず全員が意見を出しやすい風通しの良い雰囲気なので、自分から提案をする機会も多くあります。既存の研究テーマ内の活動であればすぐに実行できますし、毎年新規研究テーマの募集があるため、ここで提案することもできます。自分のアイデアを形にできるチャンスが多く、やりがいにつながっています。

将来の目標は?

自分が開発した技術を適用し、患者さんに貢献することです。私が今携わっている細胞の遺伝子改変の技術開発が適用できれば、より高品質でコストの低い薬を、多くの患者さんに届けることができます。まずは遺伝子の探索を成功させ、見つかった遺伝子を実際にタンパク質産生細胞の構築に適用したいです。その後、遺伝子改変によってより高品質になった薬を、より多くの患者さんに届け、世界中の患者さんが笑顔で生活ができるようにすることが私の目標です。

主な研究テーマ

  • 高産生宿主細胞・発現ベクター系の開発
  • 高産生培養法及び培地の開発
  • 培養工程における物質生産に対するシミュレーション技術の開発
  • 改変型抗体に対する精製法の開発(例:多重特異性抗体プロセスにおけるミスペアリング抗体除去法の開発、高収率精製やユニークな分離を実現する新規精製樹脂及びフィルターの開発)
  • 精製クロマトグラフィー工程における不純物除去に対するシミュレーション技術の開発
  • 化学工学的アプローチによるスケールアップ手法の開発
  • 連続生産等の新規バイオプロセスの開発
  • 抗体以外のモダリティに対する高生産プロセスの開発

基盤となる技術

  • 産生株構築技術
    高い生産性を持つ細胞株(CHO細胞)を短期間で構築するための技術。
  • 細胞培養技術
    抗体産生細胞から高効率に抗体を産生させる培地および培養法を開発し、医薬品として十分な品質・量の目的抗体を安定的に製造できるプロセスを確立するための技術。
  • 精製技術
    抗体の特性を維持したまま、高効率に不純物を除去する精製法を開発し、医薬品として十分な品質・量の目的抗体を安定的に製造できるプロセスを確立するための技術。

研究機器・設備・施設

  • プロセス開発研究を支える自動化装置

さまざまな自動化装置を導入し、短い期間で大量のデータを効率よく取得して、研究員が解析・考察により集中できる環境が整えられている。​最近では、取得した大量のデータをベースにしたシミュレーション技術を活用したデータ解析も一部実用し始め、デジタル技術の活用範囲を広げるべく、さらに技術開発を進めている。​

  • 次世代シーケンサー

抗体産生細胞における遺伝子を網羅的に解析することで、生産性や品質の向上につながる遺伝子を抽出し、新たな遺伝子改変宿主細胞の樹立に活かしている。​

(作成日:2023年12月)